アトランティックサーモン(Salmo salar)は、水産物のバイヤーが魚種を特定せずにサーモンを発注するとき、多くの場合に想定している魚です。北大西洋の河川と海で進化した魚ですが、今日取引されている供給のほぼすべては海面いけすで育てられており、その一部は赤道の反対側にあるチリやタスマニアで養殖されています。当社が現在ご提供しているカット、サイズ帯、養殖国は、冷凍アトランティックサーモンのページに掲載しています。
このプロファイルでは、製品の背景にある魚そのものを取り上げます。天然のサーモンがどのように生活しているか、商業供給がなぜ養殖なのか、どの国が生産しているか、そして太平洋サケの各種や海面養殖された大型のニジマスとどう違うのかを解説します。さらに、販売される形態と厨房での使われ方、バイヤーが直面する名称と代用の問題も見ていきます。
要点
- 国際取引されるアトランティックサーモン(Salmo salar)はほぼすべてが養殖魚です。天然魚の漁業は米国では禁止され、ほかの地域でも小規模です。
- 生産はノルウェーとチリが首位を占め、スコットランド、フェロー諸島、アイスランド、カナダ、タスマニアが続きます。加工は第二の国で行われることがよくあります。
- 太平洋サケとニジマスはOncorhynchus属に属し、身、脂肪、旬が異なるため、表示にはそれぞれ固有の名称が必要です。
- 規格書には魚種、養殖国、カット、色スコアを記載し、代用のリスクがある場合はDNA検査を活用してください。
アトランティックサーモンとは何か、どう見分けるか
アトランティックサーモンはサケ科(Salmonidae)のSalmo属に属し、同じ属にはブラウントラウト(Salmo trutta)がいます。太平洋のサケ類はニジマスとともに別の属であるOncorhynchusに分類されるため、厳密な生物学上の分類では、アトランティックサーモンはベニザケやキングサーモンよりも、ヨーロッパのブラウントラウトに近い親戚にあたります。ニジマス自体もかつてはSalmo属に分類されており、1989年にOncorhynchus属へ移されたため、古い文献では混乱が生じることがあります。
海で育った成魚は、背が青緑色または褐色を帯び、体側は明るい銀色、腹は白く、側線より上に小さな黒い斑点が散らばり、側線より下には通常斑点がありません。産卵期が近づくと体色が暗くなって銀色の光沢を失い、雄は「カイプ」と呼ばれる鉤状に曲がった下あごを発達させます。天然魚は体長1mを超えることがあり、FishBaseは最大150cm、公表された記録体重を約47kgとしていますが、川に戻ってくるサーモンの多くははるかに小さく、養殖魚はそうしたサイズに近づくずっと前に水揚げされます。
天然アトランティックサーモンの生活環
この魚種は遡河回遊魚で、淡水でふ化し、海で餌をとって成長し、繁殖のために再び淡水へ戻ります。卵は冷たく澄んだ川の砂利床に産み込まれ、パーと呼ばれる稚魚は、成長の速さに応じて1年から6年、川にとどまります。海へ下る準備が整うと体が銀色に変わってスモルトとなり、北大西洋の索餌場へ回遊して、そこで1年から4年を過ごします。
海で1冬だけ過ごして戻ってくる魚はグリルスと呼ばれ、2冬以上海にとどまるサーモンより小型です。帰ってきた成魚は初夏から晩秋にかけて川に入り、砂利の瀬でペアになって産卵します。その後に死ぬ個体も多いものの、太平洋の種とは異なり一部は生き残ります。ケルトと呼ばれるこの産卵後の魚は海へ下り、ごく一部が再び産卵のために戻ってきます。
天然のアトランティックサーモンの漁業は、今では小規模なものにとどまります。米国ではメイン州に残る天然個体群が絶滅危惧種に指定されており、この魚種の商業漁業と遊漁はいずれも禁止されています。米国海洋大気庁(NOAA)の水産局は、米国の水産物市場に出回っているアトランティックサーモンは養殖ものだけだとしています。北大西洋のほかの地域での漁獲も少量で厳しく規制されているため、実際上、アトランティックサーモンの国際取引とは養殖魚の取引を意味します。
養殖アトランティックサーモンの産地
海上のいけすでサーモンを市場サイズまで育てる養殖は1960年代の終わりにノルウェーで始まり、ノルウェーは今も他を大きく引き離す最大の生産国で、チリが2位です。スコットランド、フェロー諸島、アイスランド、カナダもかなりの量を生産し、オーストラリア南部のタスマニアでもこの魚種が養殖されています。チリとタスマニアは本来の分布域から大きく外れた場所で、サーモンはそこへ移植されたものであり、養殖はこの魚に適した冷たく波の穏やかな南半球の海域を利用して行われています。
養殖サーモンは淡水のふ化場で生まれます。スモルトになると、通常40~120gほどの大きさで海の網いけすに移され、最長でおよそ2年間育てられます。FAOは約2kgから水揚げが行われるとしており、多くの魚はおよそ4~6kgで市場に出ます。養殖場は年間を通じて水揚げを行うため、養殖サーモンには禁漁期がありませんが、提供されるサイズは各養殖場の放養計画と水揚げ計画によって変わります。
ここから実務上の要点が2つ導かれます。この魚種には冷たく酸素の豊富な海水が必要なため、商業養殖は南北両半球の高緯度地域に集中しています。温暖な国のサプライヤーは、通常、自国で育てているのではなく、養殖国のいずれかから輸入したサーモンを加工しています。また、ある国で育った魚が別の国でカット、燻製、ポーション加工されることも多いため、書類には養殖国と加工国の両方を記載すべきです。陸上のタンクでサーモンを育てる陸上養殖は、比較的新しく、まだ小規模な供給源です。
アトランティックサーモンと太平洋サケ・トラウトの違い
北太平洋の漁獲の大部分を占めるのは5種の太平洋サケで、いずれもOncorhynchus属です。マスノスケ(キングサーモンとしても販売)、ギンザケ(シルバーサーモン)、ベニザケ(レッドサーモン)、カラフトマス(ハンプバックサーモン)、シロザケ(ケタ)の5種です。サクラマス(英名マスサーモンまたはチェリーサーモン)は、日本、朝鮮半島、ロシア極東の周辺、北太平洋西部に分布する6番目の種です。これらの太平洋の種は、大西洋の魚とは対照的に、産卵後に死にます。取引される太平洋サケの大部分は、アラスカ、ロシア、日本、カナダの沖で季節ごとの回帰期に漁獲される天然魚ですが、ギンザケとマスノスケは比較的小規模ながら養殖もされています。
冷凍品の取引で最も紛らわしいのは、実は太平洋サケではなく、海面いけすで大型に育てたニジマス(Oncorhynchus mykiss)です。降海型の天然魚はスチールヘッドと呼ばれ、米国では「rainbow trout」と「steelhead」がいずれもこの魚種の市場名として認められています。海面養殖の大型トラウトは身がオレンジ色で、フィレにするとサーモンと区別しにくくなります。2018年には、ニジマスを中国語でサーモンを指す日常語である「三文魚」に含めた中国の業界団体規格が、強い社会的批判を浴びました。現地の慣習がどうであれ、どの魚を購入しているかを決めるのは規格書に記載された学名です。
| 魚 | 学名 | 取引上の主な供給源 | バイヤーにとっての要点 |
|---|---|---|---|
| アトランティックサーモン | Salmo salar | 養殖:ノルウェー、チリ、スコットランド、フェロー諸島、アイスランド、カナダ、タスマニア | 通年供給。オレンジがかったピンク色の身に白い脂肪の筋が入る |
| マスノスケ(キングサーモン) | Oncorhynchus tshawytscha | 北太平洋の天然魚。一部は養殖 | 太平洋サケ最大の種で、身は濃厚で脂肪が多い |
| ベニザケ(レッドサーモン) | O. nerka | 天然魚。主にアラスカとロシア | 濃い赤色で身が締まり、脂肪は少なめ。供給は季節的 |
| ギンザケ(シルバーサーモン) | O. kisutch | 北太平洋の天然魚。チリで養殖 | オレンジがかった赤色の身で、脂肪は中程度 |
| カラフトマスとシロザケ | O. gorbuscha、O. keta | 北太平洋の天然魚 | 身の色が淡く脂肪が少なく、缶詰や加工向け。シロザケの卵はイクラの伝統的な原料 |
| ニジマスまたはスチールヘッド | O. mykiss | 養殖。海面養殖の大型魚を含む | 米国FDAの名称ではサーモンではなく、トラウトまたはスチールヘッドと表示 |
アトランティックサーモンの取引形態と厨房での使い方
サーモンは、きわめて多様な形態にカットされる魚です。丸魚は頭付き内臓除去の状態で重量別に格付けされて流通します。フィレは整形の度合いで区分され、ピンボーンと腹の脂肪が残ったフィレから、皮を除いて完全に整形したロインまであります。ポーション、ステーキ、ハラス(ベリーストリップ)、端材は、そのどちらからも切り出されます。燻製工場ではフィレを、加熱せずに塩漬けして燻したコールドスモークサーモンと、燻製機の中で中心まで火を通すホットスモークサーモンに加工します。頭、中骨、腹身の端(ベリーフラップ)にも買い手がつき、特に東アジアの料理ではスープ、鍋物、焼き物に使われます。トリムの記号と色スコアについては、製品ページで詳しくご説明しています。
- 生食:生のサーモンが日本で寿司ネタとして定着したのは、1980年代半ばに始まったノルウェーの輸出キャンペーン以降のことで、今では世界中の寿司カウンターの定番となっています。事前の冷凍処理なしで生食用に提供できるかどうかは、消費される市場の寄生虫対策の規則によって決まります。
- 塩漬け:北欧のグラブラックスは生の身を塩、砂糖、ディルで漬けたもので、コールドスモークサーモンは塩をして乾燥させ、低温で燻製にしたものです。
- 加熱調理:脂肪分のおかげで、グリル、皮目を下にしたパンロースト、オーブン焼き、ポシェ、照り焼き風のつや出し焼きのいずれでもしっとりと仕上がり、半身を丸ごと焼いてビュッフェに出すこともあります。
- 加工品:端材や小さめのピースは、フィッシュケーキ、パテ、調理済み食品、おにぎりの具に使われます。
養殖のアトランティックサーモンは濃厚でまろやかな味わいで、身はしっとりと柔らかくほぐれ、筋肉のブロックの間に白い脂肪の筋が走っています。天然の太平洋サケは一般に脂肪が少なく身が締まっており、ベニザケは風味が強く、カラフトマスは穏やかです。サーモンの卵は別の製品です。日本のイクラは伝統的に太平洋の種であるシロザケの卵から作られ、当社のキャビア・高級魚卵のページにほかの魚卵とあわせて掲載しています。同じような料理に白身魚を使いたい厨房は、バラマンディの魚種ガイドと当社の冷凍バラマンディを比較してみてください。
サーモンの身の色、表示、代用
サーモンの身のオレンジがかったピンク色は、カロテノイド色素、主にアスタキサンチンによるものです。天然魚は甲殻類を食べてこの色素を取り込み、養殖魚は飼料から摂取します。色合いは給餌プログラムで決まり、バイヤーはカラーカードを基準に指定します。米国を含む一部の市場では、色が飼料に由来する場合にその旨の表示を求めています。
表示規則では一般に、サーモンのパックに3つの事実、すなわち魚種、養殖か漁獲か、原産地の記載が求められます。EUの小売水産物の規則では、商業名称、学名、生産方法、養殖魚の場合は養殖国の表示が必要です。米国では、FDAのシーフードリストがSalmo salarの市場名を「Atlantic salmon」と定め、ベニザケ(sockeye)やギンザケ(coho)など、太平洋の各種にもそれぞれ専用の名称を義務付けています。
- 養殖魚を天然魚として販売:米国の水産物偽装調査では、養殖のアトランティックサーモンが天然の太平洋サケとして販売されている例が見つかっています。天然のベニザケやギンザケは脂肪が少なく、身の色が濃く、脂肪の筋が細いものの、ソースがかかっていると違いを見落としやすくなります。
- トラウトをサーモンとして販売:海面養殖のトラウトは4~6kgのサーモンより小さいサイズで水揚げされることが多いため、フィレも小さめになる傾向がありますが、大きさは証拠になりません。確実な確認方法はDNA検査です。
- 太平洋サケの種の取り違え:カラフトマスやシロザケがベニザケやギンザケとして提供されるケースです。身の色と脂肪の筋が手がかりとなり、検査機関で魚種を確定できます。
納品ごとに品質を一定に保つ方法は高級水産食材の選び方のガイドで、冷凍魚の取引における保管温度、記録、インコタームズはリーファー輸送ガイドでご説明しています。規格がまとまりましたら、サーモンのお見積もり用にお送りください。
本ガイドは一般的な貿易情報であり、法律上・規制上の助言ではありません。要件は市場によって異なり、変更されることがあります。ご発注前に、通関業者または所管当局に最新の規則をご確認ください。




