キングクラブ(タラバガニ類)はカニ取引における巨人ともいえる存在で、大型のタラバガニのオスでは脚を広げた幅が優に1メートルを超えることもあり、その脚を目当てに購入されます。ただしこの名称は、異なる海域と水深に暮らす複数の種をまとめて指しており、サイズ、殻の色、身の歩留まり、漁期は種ごとに異なります。メニューやカートンに「キングクラブ」とだけ書かれていても、こうした違いは示されません。当社が受注調達する種、形態、等級はタラバガニのページでご紹介しており、本プロフィールではカニそのものを取り上げます。
ここでは、キングクラブと真のカニを分ける特徴、商業的に重要な種、タラバガニの成長のしかたとヨーロッパの海にすみつくようになった経緯、主な漁業がいつどこで操業しているか、厨房での提供方法、そして最もよく混同されるカニを順に見ていきます。等級、グレーズ、身入り、漁獲関連書類については当社のタラバガニとズワイガニのバイヤーズガイドで詳しく扱っているため、ここでは簡単に触れるにとどめます。
要点
- キングクラブはヤドカリに近い異尾類で、ハサミと歩脚3対をもち、5対目の脚は甲羅の下に隠れています。
- 最大の種はタラバガニで、イバラガニモドキはアラスカの3種で最も小さく、アブラガニは希少、サザンキングクラブはチリとアルゼンチンで獲れます。
- バレンツ海のタラバガニは1960年代にソ連が移植した個体の子孫で、アラスカのタラバガニと同じ種です。
- 解禁と漁獲枠は資源調査に基づいて決まり、年によって大きく変わりうるため、メニューを計画する前に、操業中の漁業とカートン記載の種を確認してください。
キングクラブと真のカニはどこが違うのか
キングクラブはタラバガニ科(Lithodidae)を構成し、ヤドカリ類も含む異尾類(Anomura)に属します。カニに似た体形は真のカニ(短尾類、Brachyura)とは別に進化したもので、分子レベルの研究ではヤドカリの仲間に近い位置に置かれています。これはバイヤーにとって単なる豆知識ではありません。最も確実な見分け方、つまり外から見える脚の数の違いを説明してくれるからです。
上から見ると、キングクラブにはハサミ1対と歩脚3対、合わせて8本の脚が見えます。5対目の脚はごく小さく、甲羅の後端の下、鰓室の中に折りたたまれていて、歩行ではなく鰓室の掃除に使われます。ズワイガニや、英語でhorsehair crabと呼ばれる毛ガニといった真のカニには、ハサミの後ろに歩脚が4対あります。日本の文献もタラバガニについて同じ点を挙げ、普通のカニには脚が10本見えるのに対してタラバガニは8本しかないように見えると説明し、ヤドカリの仲間に分類しています。
商業取引されるキングクラブの種
タラバガニ科には多くの種が含まれますが、国際市場のバイヤーに届くカニのほぼすべては、ごく一部の種でまかなわれています。下表では、それらの種を、オファーや消費地の市場で目にすることの多い名称とあわせて示します。
| 種 | 学名 | 別名 | 漁場 | 他種との違い |
|---|---|---|---|---|
| レッドキングクラブ | Paralithodes camtschaticus | カムチャツカクラブ、タラバガニ(日本) | 韓国・日本の近海からアラスカにかけての北太平洋。バレンツ海には移入された資源がある | グループ中最大で、脚が最も太い。生きている時はワインレッド、加熱すると濃い赤 |
| ブルーキングクラブ | Paralithodes platypus | アブラガニ(日本) | 北海道沖、オホーツク海、シベリア沿岸、アラスカの島々の周辺に点在する資源 | 大きさと体形はレッドに近い。解禁が不定期な小規模漁業から供給される |
| ゴールデンキングクラブ(イバラガニモドキ) | Lithodes aequispinus | ブラウンキングクラブ | 日本からアリューシャン列島を経てブリティッシュコロンビアに至る深い斜面 | 殻は金色からオレンジ色で、脚は細く、生息域はより深い。アラスカの3種の中で最も小さい |
| サザンキングクラブ | Lithodes santolla | セントージャ(centolla)、セントージャ・パタゴニカ(centolla patagónica) | マゼラン海峡とフエゴ島周辺のフィヨルドを含むチリ南部、およびアルゼンチン | 南米におけるレッドキングクラブの対応種で、最大約8kgの記録がある |
| ハナサキガニ | Paralithodes brevipes | 花咲ガニ(日本) | 北海道東部、主に根室沖の納沙布岬周辺と、その北のロシア水域 | タラバガニと同じ属の近縁種で、脚は短く太い。名称は一般に根室の地名「花咲」に由来するとされる |
| セントージョン(centollón) | Paralomis granulosa | ソフトシェルレッドクラブ(softshell red crab) | ビーグル水道を含むチリ南部とアルゼンチン、およびフォークランド諸島 | セントージャと並んで漁獲される小型のタラバガニ科のカニで、固有の名称で販売されるべきもの |
当社の調達対象はタラバガニ、イバラガニモドキ、アブラガニで、サザンキングクラブはご要望に応じて手配します。そのほかの種は、市況レポート、メニュー、写真に登場することがあるため掲載しています。
タラバガニの生態:大きさ、成長、北極圏への移植
タラバガニは、タラバガニ科全体の基準となる種です。アラスカの水産生物学者の記録では、オスは最大で約11kg(24ポンド)、甲羅は約28cm、脚を広げた幅は約1.5mに達し、メスははるかに小さく最大で約4.8kgにとどまります。生きている個体の色は暗赤色からワインレッドです。生息域は海岸線から水深約180m、さらにそれより深い場所にまで及び、稚ガニは浅く入り組んだ環境に身を隠し、成体は沖合の大陸棚で餌をとります。
すべての甲殻類と同じく、タラバガニも脱皮によってのみ成長します。稚ガニは最初の数年間は頻繁に脱皮し、その後は回数が減ります。成熟したメスは交尾の前に必ず脱皮しなければなりませんが、成熟したオスは脱皮を1回飛ばして同じ殻のまま1~2年過ごすことが多く、これが漁獲時の脚の身入りに影響します。4~5歳前後で成熟し、メスは腹部(ふんどし)の下で約1年間卵を抱き、最大級の個体は20~30歳に達すると考えられています。
本来の分布域は北太平洋で、韓国・日本の近海からカムチャツカを過ぎ、ベーリング海を通ってアラスカとブリティッシュコロンビアに至ります。ヨーロッパの個体群は、意図的な移植の結果です。1960年代、ソ連の科学者が新たな漁業を興すため、極東から運んだ幼生、稚ガニ、成体をムルマンスク沿岸の湾に放流し、カニはその後、沿岸に沿って西へ広がりノルウェーの海域に達しました。
ノルウェーはこのカニを2本立てで管理しています。ノールカップ(北岬)のほぼ経度にあたる東経26度より東では漁獲枠で漁獲量を制限し、メスにも小さな別枠を設けていますが、メスの漁獲枠はキングクラブの漁業では珍しいものです。その線より西では、沿岸に沿った分布拡大を遅らせるため、漁獲を自由にしています。バレンツ海のカニはアラスカのタラバガニと同じ種であり、カートンの「ノルウェー産」「アラスカ産」は原産地を示すもので、別の生き物を示すものではありません。
キングクラブの漁場と漁期
商業用のキングクラブは海底に仕掛けた餌入りのかごで漁獲され、ほとんどの漁業では最小サイズを上回るオスだけを水揚げします。漁期は脱皮期と交尾期を考慮して設定され、漁獲枠は資源調査に基づいて計算し直されるため、供給は一年を通じて均等ではなく、波のように集中して届きます。主な供給源は次のとおりです。
- アラスカ:ブリストル湾のタラバガニは一般に10月から1月にかけて水揚げされますが、資源調査で成熟したメスが少なすぎると判断されたため、2021/22年と2022/23年の漁期は閉鎖されました。イバラガニモドキはアリューシャン列島沿いで、8月に解禁される長い漁期に漁獲されます。プリビロフ諸島のアブラガニを対象とする漁業は資源の減少により1999年に閉鎖され、セントマシュー島の資源も長期間にわたって閉鎖されてきました。
- ノルウェー:バレンツ海のフィンマルク沿岸で獲れるタラバガニで、前述の2区域制のもとで管理されています。
- ロシア極東:オホーツク海とカムチャツカ周辺で大規模なタラバガニ漁業が営まれ、アジア市場に活ガニと冷凍ガニを供給しています。
- 南米:チリのパタゴニアとアルゼンチンで獲れるサザンキングクラブ。アルゼンチン側のビーグル水道の漁業は、資源の崩壊を受けて1990年代に閉鎖されました。
- 日本:主に北海道沖のオホーツク海での少量の国内漁獲と、根室周辺の地域特産であるハナサキガニ。日本はロシア産を含むキングクラブの輸入も行っています。
一部の輸入市場は漁獲された場所によってカニを制限しているため、ロットをどこで販売できるかも原産地で決まります。こうした規則とその裏付けとなる漁獲関連書類については、当社のバイヤーズガイドをご覧ください。冷凍ガニはリーファーコンテナで海を渡ります。温度記録とインコタームズが長い航海をどのように守るかは、リーファー輸送とコールドチェーン用語のガイドでご説明しています。
キングクラブの調理と提供
キングクラブの身は白く表面が赤みを帯び、濃厚で甘い風味があり、殻から大きな塊のまま外れます。冷凍キングクラブの大半は工場で塩水ボイルされているため、厨房での作業は通常、調理というより温め直しです。脚は蒸す、グリルする、オーブンで焼くなどして中まで温まる程度に加熱するか、解凍して冷たいまま提供します。
- 北米とヨーロッパのレストラン:縦割りまたは丸ごとの脚に溶かしバターとレモンを添えて、冷やした脚をシーフードタワーに、殻を外したメルス肉(棒肉)をサラダ、パスタ、カニのカクテルに。
- 日本:塩ゆでや蒸しにした姿ガニ、むき身を使った酢の物や寿司、カニ缶。
- 中国料理:スープ、卵料理、チャーハンに身を使うほか、水槽のあるレストランでは注文を受けてから活ガニを蒸します。
小ぶりで脚の細いイバラガニモドキは、ビュッフェ、盛り合わせ、提供前に殻から身を外す料理に向いており、脚を丸ごと見せる盛り付けに選ばれるのはタラバガニです。種よりも1皿あたりのコストが判断の決め手になる場合は、レストランと小売向けの高級水産物の選び方のガイドで具体的な計算をご紹介しています。
キングクラブと間違えやすいカニ、表示の落とし穴
キングクラブをめぐる混乱の多くは、価格の異なる近縁種、脚の似た別のカニ、カニの身に似せて作られた製品という3つの原因から生じます。
- イバラガニモドキをタラバガニとして販売:イバラガニモドキは小ぶりで脚が細く、殻は金色からオレンジ色で、取引価格も低めです。タラバガニとして提示されたロットは、脚の太さとカートンに印刷された学名を確認してください。
- アブラガニとタラバガニの混載:加熱後のアブラガニはタラバガニとよく似ており、一緒に箱詰めされることがよくあります。表示規則で正確な種名が求められる場合は、両者を分けて申告するよう求めてください。たとえば日本では、ブルーキングクラブの日本名であるアブラガニをタラバガニとして販売することは認められていません。
- セントージョンをセントージャとして販売:南米南部では、Paralomis granulosaがサザンキングクラブと並んで漁獲されます。別の種であり、固有の名称で販売されるべきものです。
- ズワイガニ:長く細い歩脚を4対もつ真のカニで、殻は薄く、脚1本あたりの身はずっと少なめです。詳しくは当社のズワイガニの種類ガイドをご覧ください。
- かに風味かまぼこ:魚のすり身から作るスティックやレッグタイプの製品は、キングクラブの身に見えるよう成形・着色されています。かに風味かまぼこ(カニカマ)として販売される正規の製品ですが、キングクラブと表記することは決して許されません。
種、漁獲海域、カニの形態という3つの事実がわかれば、ほとんどの紛争は解決します。次の漁期に特定の種や原産地が必要な場合は、料理、等級、数量をお知らせください。供給可能な漁業を当社で確認します。
本ガイドは一般的な貿易情報であり、法律上・規制上の助言ではありません。要件は市場によって異なり、変更されることがあります。ご発注前に、通関業者または所管当局に最新の規則をご確認ください。




