オニテナガエビは、世界中で冷凍販売されるエビの中で異色の存在です。コエビ類(カリデア)に属する川エビMacrobrachium rosenbergiiで、冷凍庫で隣り合う海産のブラックタイガーやバナメイエビとは違い、成体は淡水で暮らします。FAOはジャイアントリバープローンと呼び、ベンガルの料理人はゴルダ・チングリ(golda chingri)、タイの料理人はクン・カム・クラーム(kung kam kram)、マレーシアとインドネシアの料理人はウダン・ガラ(udang galah)の名で知っています。
本プロフィールでは、この種を特徴づける点を取り上げます。体のつくりと雄のタイプ、汽水で始まる生活史、養殖方法、丁寧な取り扱いが重要な理由、混同されやすい生き物、そして調理法です。BSAは、タイと提携産地の池で養殖されたオニテナガエビを、有頭、無頭、むき身の各形態で供給しています。
要点
- オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)は、コエビ類に属する川エビで、海産のクルマエビ科のエビと異なり、雌が卵を抱えます。
- 成体は淡水で暮らしますが、幼生には汽水が必要で、このことが天然での生活史と種苗生産の方法の両方を形づくっています。
- 小型、オレンジクロー、ブルークローの各タイプを経る雄の不ぞろいな成長が、池のエビのサイズに大きな幅を生み、重量の多くを頭とハサミに集めています。
- 素早い冷却と凍結が柔らかな尾の身を守ります。その持ち味が最もよく表れるのは、タイで丸ごと焼くか、ベンガルのココナッツカレーで煮込んだときです。
オニテナガエビがほかのエビと違う点
冷凍食品の売り場では、エビの世界の2つの大きなグループが出合います。ブラックタイガーとバナメイエビはクルマエビ科のエビで、卵をそのまま海中に放出します。Macrobrachiumはコエビ類のテナガエビ科(Palaemonidae)に属し、雌は卵がふ化するまでの約3週間、腹部の下に卵を抱えています。
- サイズ:全長で雄は約32cm、雌は約25cmに達し、淡水エビの中でも最大級です。
- 色:通常は緑がかった色から茶色がかった灰色で、大きな個体では青みを帯びて濃くなることもあり、触角は青いことがよくあります。
- ハサミ:第2歩脚の先には長いハサミがあり、成熟した雄では青色またはオレンジ色で、雌でははるかに小さくなります。
- 額角:長く細く、わずかにS字状で先端が上向きに反り、上縁に11~14本、下縁に8~10本の歯があります。
- 頭部:大きく硬い頭胸甲をもち、体全体に占める割合が海産エビの頭部よりはるかに大きくなっています。
オニテナガエビの産地:分布と生活史
この種は、汽水の河口に近い熱帯の淡水域、しばしば非常に泥が多く濁った川に生息します。抱卵した雌は卵が汽水でふ化するように川を下り、幼生はそこで約1か月かけて11の段階を経ます。その後、稚エビは上流へ戻り、途中で小さな滝や堰を登ることもできます。稚エビも成体もほとんど何でも食べ、藻類、水草、軟体動物、昆虫、ミミズ類、ほかの甲殻類を餌にします。
長い間、M. rosenbergiiはインドからオーストラリア北部まで広く分布する1つの種として扱われていました。2007年の研究で実際には2つの種であることが示され、動物命名法国際審議会(ICZN)の裁定を経て、この学名は現在、南アジアから東南アジア大陸部を経てインドネシア西部まで分布する西側の種に属しています。フィリピン、インドネシア東部、ニューギニア、オーストラリア北部の東側の個体群は、現在はMacrobrachium spinipesに分類されています。国際取引される養殖のエビは西側の種です。
オニテナガエビの養殖方法
現代的な養殖は1960年代初頭に始まります。マレーシアで研究していたFAOの専門家シャオウェン・リン(Shao-Wen Ling)が、幼生の生存には汽水が必要であることを発見したのです。1972年までに、タクジ・フジムラ(Takuji Fujimura)が率いるハワイのチームが商業規模の種苗生産の手法を確立し、タイと台湾が現代的な養殖の先駆けとなりました。さらに1978年にタイで始まったFAOのプロジェクトが技術の普及を後押ししました。それ以降、養殖のための導入によって、この種は中南米、カリブ海、米国など、アジアをはるかに越えた地域にまで広がっています。
中国は大生産国で、コイと一緒に混養することが多く、ベトナムでは農作物とあわせて養殖されることもあります。FAOのファクトシートは、養殖および天然のエビの相当な割合を輸出している国として、インド、バングラデシュ、ベトナム、タイを挙げています。中国ではさらに、より小型の在来の近縁種であるテナガエビ(Macrobrachium nipponense)も養殖されています。
種苗生産場では幼生を約12‰の汽水で飼育し、内陸の施設ではトラックで運んだ海水や塩水を淡水と混ぜてこの汽水を作ります。養成(グローアウト)は淡水で行い、主に素掘りの池に1平方メートルあたり数尾から約20尾の稚エビを放養します。雄の成長が非常に不ぞろいなため、多くの養殖場では、引き網による最大級のエビの定期的な間引きと最終的な排水収穫を組み合わせ、市場が求めるサイズに合わせて収穫時期を調整しています。熱帯では1年中放養と収穫ができますが、冷涼な地域では養成できる時期が暖かい季節の短い期間に限られます。
取り扱いと市場形態:淡水エビの身が柔らかくなる理由
FAOのファクトシートは率直で、淡水エビは正しく取り扱い、加工しなければ「ぐずぐずになりやすい」と述べています。そこに示された手順は、収穫時にエビを押しつぶさないようにし、池のほとりで0°Cの氷水に入れて締め、洗浄したうえで、氷詰めにして3日以内に生鮮で販売するか、急速冷凍して-20°C以下で保管するというものです。活の市場向けのエビは、20~22°Cの曝気した水に入れて輸送します。
解凍したサンプルについて、この種に特有の3つの点を確認すれば、その手順が守られたかどうかがわかります。
- 尾の身が締まっていて押すと戻り、特に頭部とのつなぎ目で柔らかかったりペースト状になったりしていないこと。
- 有頭の等級では、盛り付けの見栄えこそが購入の目的であるため、ハサミと脚がおおむね欠けずに残っていること。
- 甘くすっきりしたにおいと味で、池に由来する土臭さや泥臭さがないこと。
生産国では国内向けに活や生鮮で販売し、輸出向けには有頭、無頭、むき身の冷凍品にします。FAOによれば、主に天然のエビのむき身が古くから輸出されてきたほか、殻付きで通常は無頭の養殖エビが欧州のスーパーマーケットでおなじみの商品となりました。ハサミの付いた有頭のエビは盛り付け用の形態です。頭とハサミが重量の大きな部分を占めるため、尾が丸ごとの個体に占める割合は同程度の大きさの海産エビより小さく、有頭と無頭のオファーを比較する際にはこの点が重要になります。尾数とグレーズの計算は、当社の冷凍エビの尾数と正味重量のガイドでご説明しています。
オニテナガエビの呼び名と似た生き物
| 呼び名 | 言語・市場 | 注記 |
|---|---|---|
| Giant river prawn(ジャイアントリバープローン) | FAOの英語名 | 統計や学術で使われる |
| Giant freshwater prawn(ジャイアントフレッシュウォータープローン) | 英語圏の取引 | 輸出用カートンでよく見られる名称 |
| Malaysian prawn(マレーシアンプローン) | 米国 | 米国での通称 |
| Scampi、freshwater scampi(スカンピ、フレッシュウォータースカンピ) | インド | 欧州市場でいうNephropsのスカンピではない |
| Golda chingri(ゴルダ・チングリ) | バングラデシュと西ベンガル州 | ベンガル語。bagda chingri(バグダ・チングリ)はブラックタイガーを指す |
| Kung kam kram、kung mae nam(クン・カム・クラーム、クン・メー・ナーム) | タイ | kung mae namは「川のエビ」の意 |
| Udang galah(ウダン・ガラ) | マレーシアとインドネシア | マレー語とインドネシア語の名称 |
| 羅氏沼蝦 | 中国 | 文字どおりには「ローゼンバーグの沼のエビ」 |
| Bouquet géant(ブーケ・ジェアン) | フランス語(FAOの名称) | FAOの公式フランス語名 |
- ラングスティーヌ:欧州の「スカンピ」はハサミをもつ海産のロブスターNephrops norvegicusですが、インドの「スカンピ」の表示はこの川エビを指すことがあります。違いについては当社のラングスティーヌの種のプロフィールでご説明しています。
- 内陸の池で育つ海産エビ:バナメイエビなどのクルマエビ科のエビは内陸の低塩分の池で育てられることがあり、その場合に大まかに淡水エビと呼ばれますが、長いハサミや大きく重い頭はもっていません。
- テナガエビ(Macrobrachium nipponense):中国で養殖される小型の近縁種で、独自の名称で販売されています。
- オーストラリアのジャイアントリバープローン(Macrobrachium spinipes):東側の種で、オーストラリア北部ではチェラビン(cherabin)として知られています。
- ザリガニ:同じくハサミをもつ淡水の甲殻類ですが、エビではなくザリガニの仲間で、大きなハサミは第2歩脚ではなく第1歩脚にあります。当社のザリガニの製品ページとザリガニの種のガイドをご覧ください。
厨房でのオニテナガエビの調理法
尾の身は甘く、多くの海産エビより柔らかな食感で、頭には多くのアジアの料理人が重宝する、濃厚でクリーミーな脂(ミソ)が詰まっています。定番料理はどれも、その両方を最大限に生かすように作られています。
- タイ:クン・メー・ナーム・パオ(kung mae nam phao)は、川エビを縦に割って炭火で焼き、辛いシーフードのつけだれを添える料理で、アユタヤ周辺の川沿いのレストランの名物です。春雨と一緒に土鍋で蒸し焼きにすることもあります。
- ベンガル:ゴルダ・チングリ・マライカリは、エビを穏やかな味わいのココナッツミルクのソースで煮込んだもので、祝いの席の料理です。
- マレーシアとインドネシア:ウダン・ガラをグリルにしたり、揚げたり、辛いソースで煮込んだりします。
- その他の地域:縦に割ってガーリックバターでグリルにするほか、有頭のまま海鮮盛り合わせに出すと、ハサミが強い視覚的な印象を与えます。
解凍後は早めに調理し、柔らかな尾の身はすぐに硬くなるため加熱は短時間にとどめ、地域の食品安全規則が求める温度まで火を通してください。より締まった歯ごたえの海産の代替品としては、ブラックタイガーと比較してみてください。メニューの目玉としてハサミの付いた有頭の等級を調達したい場合は、必要な尾数とパックをお知らせください。
本ガイドは一般的な貿易情報であり、法律上・規制上の助言ではありません。要件は市場によって異なり、変更されることがあります。ご発注前に、通関業者または所管当局に最新の規則をご確認ください。



