シャコは、香港の海鮮レストランから東京の寿司カウンター、イタリアの魚市場まで、さまざまな場所で品書きに登場しますが、生物としてはエビの仲間ではありません。甲殻類のなかで独立した目である口脚目(Stomatopoda)に属し、商業的な漁獲は、沿岸近くの柔らかい泥底にすみ、巣穴を掘る数種に由来します。供給は天然の漁業によるもので、当社がご提供している種類、形態、等級は冷凍シャコのページに掲載しています。
このプロファイルでは、口脚類と本来のエビとの違い、市場に出回る種類と、中国、日本、韓国、地中海の取引でのそれぞれの呼び名、生態、漁獲の時期、そして各国の料理での調理法を解説します。最後に、表示の誤りにつながりやすい、よく似た生き物と名称の落とし穴を取り上げます。
要点
- シャコは口脚類で、エビ、カニ、ロブスターとは別の甲殻類の目に属し、商業種はいずれも巣穴を掘る突き刺し型です。
- Oratosquilla oratoriaは東アジアの市場に、Harpiosquilla raphideaは熱帯産の大型等級に、Squilla mantisは地中海に供給されています。
- 中国語、日本語、イタリア語の市場名は種と1対1で対応していないため、すべての書類に学名を記載する必要があります。
- 春に卵を抱く雌と中国の夏季休漁が、北の海域からの供給量を左右します。
シャコとはどんな生き物か
口脚類はエビ、カニ、ロブスターと同じ甲殻類ですが、この3つのグループをすべて含む十脚目(Decapoda)には属していません。体の中心は、長く平たい、体節に分かれた腹部で、その先端は幅の広い尾扇になっており、短い頭胸甲は体の前方部分しか覆っていません。眼は自由に動く柄の先にあり、最も目を引く特徴は、頭の下に折りたたんで構える一対の大きな捕脚です。カマキリの前脚に似たこの捕脚が、英名mantis shrimp(カマキリエビ)の由来になっています。
生物学者は、この捕脚の使い方によってシャコ類を分類します。突き刺し型(スピアラー)は、捕脚の先端の節に鋭いとげが並び、砂や泥に巣穴を掘って、その入り口から魚やエビなど体の柔らかい獲物を待ち伏せします。打撃型(スマッシャー)はとげの代わりにハンマーのようなこぶを持ち、岩やサンゴ、がれきの間に身を潜めて、巻き貝など殻の硬い獲物を叩き割ります。商業的に重要な種はいずれも突き刺し型で、その多くはシャコ上科(Squilloidea)に属します。サンゴ礁の写真や水族館でおなじみの鮮やかな色の打撃型は、食用の取引にはまったく関わりません。
製品を扱う方にとっては、ここから実務上の注意点が2つ導かれます。捕脚と尾に沿ったとげは皮膚を切るほど鋭いため、姿のままのシャコは手袋をして扱います。また、分類上は別の目に属していても、アレルゲン表示ではシャコは甲殻類に含まれ、エビやカニと同じ扱いになります。
シャコの商業種とその呼び名
バイヤーが扱うシャコの大部分は3つの種で占められ、それぞれが異なる地域と結びついています。3種は大きさがはっきりと異なり、その大きさが、それぞれの販売のされ方をほぼ決めています。
| 種 | 分布と生息環境 | 最大サイズ | 市場での呼び名 |
|---|---|---|---|
| Oratosquilla oratoria、シャコ(英名Japanese mantis shrimp) | 西太平洋のベトナムから日本北部まで、南はフィリピンまで分布。波の穏やかな湾や河口域の泥底に巣穴を掘り、水深約10~100mで記録されています | 約18.5cm | シャコ(日本)、口蝦蛄と皮皮蝦(pipixia)(中国)、gaetgajae(韓国) |
| Harpiosquilla raphidea(英名giant harpiosquillid mantis shrimp) | インド・西太平洋のパキスタンから中国まで、南はインドネシアまで分布。浅い泥底や河口域にすみ、インドネシア、マレーシア、タイに商業漁業があります | 約36cm。知られているシャコ上科の種で最大 | 英語圏の取引ではgiant mantis shrimp(ジャイアント・マンティスシュリンプ) |
| Squilla mantis(英名spottail mantis shrimp) | 地中海と、カディス湾からアンゴラまでの東大西洋に分布。泥底にすみ、多くは水深50mより浅い場所で見られます | 約20cm | canocchiaまたはpannocchia(イタリア)、galera(スペイン)、squille(フランス) |
中国語名には注意が必要です。口蝦蛄はO. oratoriaの標準名、皮皮蝦は国内の広い地域で使われる日常的な呼び名である一方、広東省と香港で使われる広東語の瀨尿蝦は、複数のシャコ類を含む呼び名です。日本ではシャコといえばO. oratoriaを指します。イタリアでは、トスカーナ地方の呼び名であるcicala di mareが、口脚類とはまったく関係のない小型のセミエビ類、Scyllarus arctusにも使われています。
遺伝学的研究により、O. oratoriaの中には北方系統と南方系統が別々に存在することがわかっており、この種はオーストラリアとニュージーランドでも外来種として記録されています。アジアの漁獲物には、主要種と一緒に水揚げされる小型のシャコ科の種も含まれます。こうした種は総称的な品名に紛れ込ませず、それぞれの学名で書類に記載すべきです。
シャコの生態と繁殖
商業種のシャコは、柔らかい海底にすむ生き物です。O. oratoriaは泥に巣穴を掘って日中の多くの時間を潜んで過ごし、夜間に最も活発になって、甲殻類、軟体類、ゴカイ類、小魚を捕らえます。Squilla mantisは地中海とその周辺の大西洋の砂泥底で巣穴に暮らし、熱帯の大型種も、同じような沿岸の泥底の漁場で漁獲されます。
卵を持つ雌に高値がつく理由は、繁殖の仕組みにあります。O. oratoriaの雌は巣穴の中で産卵し、1日のうちに卵を薄い円盤状にまとめ、幼生がふ化するまで小さな口器の付属肢で卵塊の世話をします。ふ化した幼生はおよそ1~2か月プランクトンとして漂い、11の発育段階を経てから海底に定着します。成熟の進んだ卵をたっぷり抱えた雌は春から初夏にかけて漁獲され、日本の料理人はこの時期をシャコの旬と考えています。
産卵の時期は一定ではありません。東京湾では成熟した雌が3月から9月まで見つかっており、産卵は春の1回のピークから春と夏の2つの時期へと移り、現在では夏の産卵が毎年生まれる稚シャコの大半を生み出しています。卵の入り具合は決まった日付に従うのではなく、漁場や年によって変わるものとお考えください。
シャコの漁場と漁期
O. oratoriaは中国の沿岸漁業における主要なシャコで、渤海、黄海、東シナ海で大量に漁獲されているほか、韓国と日本の周辺でも漁獲されています。底びき網、刺し網などの沿岸漁具で獲られ、底生生物の混獲の一部として水揚げされることも多くあります。
北の海域では、生物学的な要因と同じくらい、規制が漁期を左右します。中国では毎年、渤海、黄海、東シナ海、南シナ海で5月1日に夏季休漁が始まり、海域や漁具の種類に応じて8月または9月まで続きます。休漁期間中はこれらの海域からの生鮮品の供給が乏しくなり、漁船が操業を再開するまでは冷凍在庫が市場を支えます。日程は毎年改めて確定されるため、取引計画を立てる際にはご確認ください。
熱帯の大型種は東南アジアの小規模漁業を支えており、主に小型の底びき網漁船と刺し網漁船が操業しています。たとえばインドネシア・ジャンビ州のクアラ・トゥンカルでは、漁獲の大半が香港と台湾へ輸出されています。Squilla mantisはトロール網、三枚網、かご、地びき網で漁獲され、地中海の市場、とりわけスペインと、イタリアのリグリア海およびアドリア海の沿岸で鮮魚として販売されています。
シャコの流通形態と厨房での調理法
漁場の近くでは、シャコは活きたままか、ごく新鮮な状態で販売されることがよくあります。死後、尾の身がすぐに柔らかくなってしまうためです。国際取引は冷凍品に頼っており、主な形態は次の3つです。
| 形態 | 内容 | 厨房での主な用途 |
|---|---|---|
| 姿(生またはボイル) | シャコをまるごと、トレーで凍結するか、とげを守るために仕切り紙を挟んで層状に凍結したもの | 塩コショウ揚げ、蒸し物、ゆで物、火鍋。食べる人が卓上で殻をむきます |
| 半割り | 尾を縦に割って掃除し、身が見えるようにしたもの | グリル、ニンニクを使ったオーブン焼き、ビュッフェ、シーフードプラッター |
| むき身 | 殻から取り出した尾の身。生のもの、または短時間加熱したもの | 寿司、チャーハン、餃子、オムレツ、サラダ |
日本ではシャコは江戸前寿司の伝統的なネタで、ほぼ例外なく生ではなく火を通して供されます。短時間ゆでたあと、一般に醤油、みりん、水を合わせた煮汁に浸して味を含ませ、握りに仕上げたものには、穴子にも使われる甘く煮詰めたたれ、煮詰め(ツメ)を塗ることが多くあります。卵を抱いたままのものは季節の名物です。
中国料理では、シャコは手で食べる取り分け料理として扱われます。香港や広東省のレストランでは塩とコショウで揚げるか、姿のまま蒸して出され、食べる人が自分で殻を割ります。東南アジア各地では大型の熱帯種がグリルや炒め物にされ、地中海ではSquilla mantisが鮮魚として地元の魚市場に並びます。どの料理でも加熱時間は短めです。薄い尾の身は、火を通しすぎるとすぐにぱさつくためです。
シャコと紛らわしい生き物、品質の見分け方、表示
名前やメニュー上の位置づけ、あるいは市場の売り場をシャコと共有する生き物はいくつかあり、書類上ではそれぞれを区別しておく必要があります。
- エビ類:頭胸部全体を覆う頭胸甲を持ち、折りたたみ式の捕脚を持たない十脚類です。ラベルでシャコを単に「エビ」(shrimpやprawn)と表記すると、生き物の実体を誤って表示することになります。
- セミエビ類:板状の触角を持つ平たい十脚類で、そのうちの1種はSquilla mantisと同じcicala di mareというイタリア語名を持っています。
- アカザエビ(ラングスティーヌ):甘みと食感でシャコとよく比べられますが、本物のはさみを持つ別の十脚類、Nephrops norvegicusです。当社のラングスティーヌの魚種ガイドとアカザエビ(ラングスティーヌ)の製品ページをご覧ください。
- その他のシャコ科の種:混獲で揚がる小型のシャコ類です。ロットに混ぜ込むのではなく、それぞれの種名で申告すべきです。
品質を左右するのは、種類よりもはるかに取り扱いです。脱皮直後の個体は殻が薄く、身に張りがなく水っぽいものです。また、身と殻の間にすき間が見える場合は、たいてい漁獲から凍結までに時間がかかりすぎたことを意味します。尾に身が詰まり、締まってつやがあり、すっきりとした海の香りがするものが良いロットの目印です。当社の冷凍エビの規格ガイドで説明しているグレーズの除去方法と尾数の数え方は、シャコにもそのまま当てはまります。
供給が天然物であるため、EU向けの貨物には違法漁業に関するEUの規則に基づく漁獲証明書が必要で、他の市場にもそれぞれ独自のトレーサビリティ要件があります。オファーと請求書のすべてに学名を記載しておけば、ラベルには貴国の当局が認める市場名のいずれでも使えます。出荷前には、仕向地の最新の書類規則をご確認ください。特定の料理に向けて種類と等級を比較したい場合は、種類とサイズを指定してお見積もりをご依頼ください。
本ガイドは一般的な貿易情報であり、法律上・規制上の助言ではありません。要件は市場によって異なり、変更されることがあります。ご発注前に、通関業者または所管当局に最新の規則をご確認ください。



